外壁塗装の無機塗料は優れた耐久性を誇り、長期間美観を保てる塗料として人気です。無機塗料の耐用年数は、どれくらいなのでしょうか?本記事では、無機塗料の耐用年数や選び方のポイントについて解説します。
無機塗料とは?特徴や有機塗料との違いを解説

無機塗料は、無機物がベースの外壁用塗料で、長持ちしやすいのが魅力です。有機塗料と比較して紫外線や雨風に強く、メンテナンスの頻度を抑えられます。
成分
無機塗料の主成分は、ガラスや鉱石に含まれる「シリコン」や「ケイ素」などです。たとえば二酸化ケイ素(SiO₂)はガラスの材料にも使われていて、とても安定した性質があります。
無機成分を主軸にした塗料には、以下の特徴があります。
- 紫外線や熱に強く、劣化しにくい
- 分解・変質しにくく、長期間にわたって塗膜性能を維持できる
有機塗料との違い
無機塗料と有機塗料の違いは、主成分と耐久性です。
違い | 無機塗料 | 有機塗料 |
主成分 | シリコンやケイ素などの無機物 (硬度が高い) | 炭素を含むアクリルやウレタンなどの樹脂 (柔軟性が高い) |
耐久性 | 紫外線に強く、塗膜の劣化が非常にゆるやか 燃えにくい (防火性の求められる場所に適している) | 紫外線による劣化が進みやすい メンテナンスの頻度が高い |
以上の違いを踏まえると、耐久性を重視する場合は無機塗料のほうが適しています。
ハイブリッド塗料との違い
一般的な無機塗料とハイブリッド塗料の違いは、含まれる無機成分の割合です。
違い | 無機塗料 | ハイブリッド塗料 |
無機成分の割合 | 有機樹脂をほとんど含まず、耐候性や防汚性が高い (塗膜が硬くひび割れしやすい) | 無機と有機の成分をバランスよく配合している (無機塗料の耐久性に加えて、有機塗料の柔軟性も持ち合わせている) |
耐久性と施工性のバランスを重視したい場合は、ハイブリッド塗料が適しています。
主要メーカーの商品
無機塗料は複数の大手メーカーから販売されており、選択肢が豊富です。
メーカー | 商品名 | 特徴 |
日本ペイント※1 | グランセラ™トップ | 無機と有機のハイブリッド 15〜20年の耐用年数を期待できる |
関西ペイント※2 | アレスダイナミックMUKI | 無機と有機のハイブリッド 20年以上の耐用年数を期待できる |
プレマテックス※3 | ウルトラMUKI | 無機と有機のハイブリッド 15〜20年の耐用年数を期待できる |
アステックペイント※4 | 無機ハイブリッドウォールJY | 無機と有機のハイブリッド 20年以上の耐用年数を期待できる |
エスケー化研※5 | エスケープレミアム無機 | 無機と有機のハイブリッド 15年以上の耐用年数を期待できる |
ペイントライン※6 | 無機ハイブリッドチタンガード | 無機と有機のハイブリッド 最大30年近くの耐用年数を期待できる |
以上の商品は耐久性に加えて、防汚性や作業性も高いです。長期間美しい外観を保ちたい方に、おすすめです。
無機塗料の耐用年数はどれくらい?

無機塗料は耐久性がありますが、「実際はどれくらいもつの?」と気になる人もいるはずです。ここでは、無機塗料の耐用年数について詳しく解説します。
耐用年数の目安
無機塗料の耐用年数は、一般的に15〜20年とされています。シリコン塗料やフッ素塗料より長持ちし、塗り替えの手間が減るのもメリットです。
特に、無機と有機のハイブリッドタイプは耐用年数が長めです。例えば関西ペイントの「アレスダイナミックMUKI」は、公式サイトで20年以上の耐用年数があると紹介されています(※7)。
耐用年数に影響する要因
無機塗料の耐用年数は製品の品質だけでなく、施工の環境や方法、技術などによっても左右されます。
- 塩害のある地域や直射日光の強い場所では劣化が早まる傾向がある
- 下地処理や塗装工程が不適切だと、本来の性能が発揮されにくい
- 同じ塗料を使用しても、施工業者の技術力によって、耐用年数に差が出る
無機塗料の力をしっかり発揮させるには、環境に合った塗料を選ぶことや、信頼できる業者に依頼することが大切です。
無機塗料の耐用年数が長い理由(メリット)

無機塗料の耐用年数は一般的な塗料と比べて長いとされています。ここでは、無機塗料の耐用年数が長い理由(メリット)について詳しく解説します。
劣化の原因(カビ・苔など)となる成分が少ない
無機塗料には、カビ・苔の栄養源となる有機成分があまり含まれていません。そのため微生物の繁殖を抑えやすい特徴があります。
- 湿気の多い環境でも、他の塗料に比べてカビや苔が発生しにくい
- 清潔な外観を長く保ちやすい
こうした理由から、無機塗料は有機塗料よりも高い耐久性を持っています。有機塗料には湿気や雨水と反応しやすい有機物が含まれていて、それがカビや苔の原因になることもあります。一方、無機塗料は劣化の進み方がゆるやかなので、15〜20年と長くもつのが特長です。
紫外線や雨風に強い
無機塗料は、紫外線や風雨に強く、長持ちしやすいのが特長です。
- 無機塗料の無機成分(ガラスやケイ素など)は紫外線を吸収しにくく、分子構造が壊れにくい
- 無機塗料は硬度が高く、風による砂ぼこりや飛来物などで塗膜が傷みにくい
南向きの外壁は日照時間が長いため、劣化しやすい傾向があります。しかし無機塗料なら、直射日光によるダメージを軽減することができます。 さらに、耐摩耗性が高く、防護機能を長く保てます。
汚れにくく美観を長期間維持できる
無機塗料は親水性が高く、雨で汚れが流れやすいため、きれいな外観が長持ちします。
- 塗膜表面が滑らかで、排気ガスやホコリなどの汚れが付着しにくい
- 都市部や交通量の多い場所でも、無機塗料なら洗浄や再塗装の回数を減らせる
見た目の美しさを長期間維持したい方にとって、非常に大きな利点といえます。
ライフサイクルコストを抑えられる
無機塗料は初期費用は高めですが、長い目で見るとコストを抑えられるのも魅力です。
- 耐用年数が15〜20年と長く、再塗装が少なくて済むため、全体のメンテナンス費用を抑えられる
- 10年ごとに塗り替えが必要な有機塗料に比べ、無機塗料なら1回分の施工費用を節約できる
長い目で見てコストを抑えたい方にとって、無機塗料はとても合理的な選択といえます。
無機塗料を使用する際の注意点(デメリット)

無機塗料は耐久性や美観維持に優れる一方で、使用する際の注意点も存在します。ここでは、無機塗料を使用する際の注意点(デメリット)について詳しく解説します。
施工費用が高い
無機塗料は、有機塗料と比べて価格が高めで、外壁塗装の費用も上がる傾向があります。これは、原材料のコストが高いことに加えて、専門的な技術が必要になるからです。
- 有機塗料(アクリル・ウレタン・シリコンなど)の施工費用は1㎡あたり2,000円〜4,000円程度
- 無機塗料の施工費用は1㎡あたり3,500円〜5,000円(ただし状況により、それ以上になることも)
長い目で見れば、耐久性のおかげでコストを抑えられます。ただ、初期費用の負担は大きいため、予算とのバランスはしっかり考える必要があります。
施工が難しい
無機塗料の施工は難易度が高く、専門知識や経験がないと、本来の性能を発揮できないこともあります。そのため、実績のある業者に依頼するのが安心です。
- 気温や湿度に左右されやすく、扱いを誤ると塗膜の不良やはがれなどの原因になる
- 無機塗料の力をしっかり発揮させるには、下地処理や塗り方の管理が大切
そのため無機塗料の施工する際には、信頼できる業者選びが成功の鍵を握ります。
ひび割れしやすい
無機塗料は硬くて丈夫な反面、柔らかさに欠けるため、外壁の動きについていきにくい性質があります。そのため、ひび割れが発生するリスクがあります。
- モルタルなどの割れやすい構造に塗布した場合、下地の動きに対応しきれず塗膜に亀裂が入りやすい
- 地震や寒暖差で外壁が動いたとき、有機塗料なら多少の伸び縮みに対応できるが、硬さのある無機塗料では、それが難しい
外壁の素材や構造によっては、無機塗料の使用に注意が必要です。難しい場合は、施工業者と相談のうえで判断するのが安心です。
ツヤ感が出すぎる
無機塗料は光沢性が高く、仕上がりに強いツヤが出る傾向があります。
- 塗膜表面が滑らかになるため、光を反射しやすい
- 高級感が出る反面、落ち着いたマットな仕上がりを表現できない
ただしツヤを抑えた「3分ツヤ」「5分ツヤ」といったタイプの無機塗料も販売されており、選択の幅は広がっています。仕上がりの好みに合わせて、ツヤ感も検討しましょう。
無機塗料の耐用年数を延ばす方法

無機塗料は、元々高い耐久性を持っています。しかし施工の仕方や使用環境によっては、本来の性能を発揮できないことがあります。
信頼できる塗装業者を選ぶ
無機塗料の性能を活かすには、信頼できる塗装業者の選定が不可欠です。無機塗料は施工が難しいため、経験や知識が足りない業者に依頼すると塗膜の不良や早く劣化する原因になることもあります。
- 無機塗料の施工実績が豊富な業者であれば、下地処理や塗り方の技術もしっかり備えている可能性が高い
- 業者の公式サイトや口コミサイトなどで、各業者の施工実績や評判をチェックする
相見積もりを取りつつ、各業者の実績や保証内容をチェックして、信頼できるところにお願いするのがおすすめです。
外壁材との相性を検討する
無機塗料にも向き・不向きがあるので、外壁材との相性をきちんと確認することが大切です。
- ひび割れしやすいモルタル外壁には、柔軟性のある有機塗料が適している
- ALCや金属のような安定した素材には、硬度の高い無機塗料でも対応できる
素材との相性を考慮せずに選ぶと、せっかくの高性能が十分に発揮されません。施工前に建物の材質に合った塗料選びを意識しましょう。
正しい塗装工程を心がける
正しい塗装工程を守ることで、無機塗料の性能を最大限に発揮します。
- 下地処理が不十分だったり、塗る量や乾燥時間が適切でないと、塗膜の耐久性が落ちてしまう原因になる
- 洗浄が不十分なまま塗装すると、汚れが原因で塗料がうまく密着せず、早くはがれてしまうことがある
塗装を業者にお願いする際は、「メーカーの仕様通りに施工されているか」「工程がしっかり管理されているか」もチェックしておくと安心です。
定期的なメンテナンス・塗り替えを行う
いくら耐用年数が長い無機塗料でも、定期的な点検やメンテナンスは欠かせません。
- 塗膜の浮きやひび割れなど、初期の劣化を早めに見つけて対処すれば、修繕にかかる費用をおさえられる
- 施工後7年前後を目安に外壁の状態をチェックし、必要であれば部分補修を行う
定期的なメンテナンス・塗り替えを行うことで、耐用年数をさらに延ばすことが可能です。無機塗料の高性能を維持するために、継続的な管理を心がけましょう。
無機塗料の選び方|向いているケースと向いていないケース

無機塗料は優れた性能を持つ反面、すべての建物や環境に適しているとは限りません。施工後に後悔しないためには、適した塗料を選ぶ必要があります。
無機塗料が向いているケース
無機塗料は、外壁をきれいな状態で長く保ちたい方や、メンテナンスの手間を減らしたい方にぴったりです。
- 耐候性や防汚性に優れているため、日当たりが強く汚れやすい場所でも長くきれいな状態を保てる
- 初期費用が高くても、塗り替えの回数を減らしたい方にとって、ライフサイクルコストの面で大きなメリットがある
このように、長い目で見てコストや性能を重視したい方には、無機塗料がぴったりです。
無機塗料が向いていないケース
無機塗料は、初期費用を抑えたい場合やひび割れが起きやすい外壁の場合には向いていません。
- できるだけ予算をおさえたい場合は、アクリルやウレタンなどの有機塗料が合っている
- モルタル外壁や、施工から年数がたった外壁は動きが出やすいため、無機塗料の硬さによって塗膜にひび割れが起きやすい
上記の内容をふまえて、使う場所や環境に合っているかどうかを見極めながら、無機塗料を選んでください。
まとめ:無機塗料の耐用年数を理解して適切に選ぼう

無機塗料は、高耐久・防汚性に優れた塗料です。ただし施工費用や外壁材との相性を考慮しなくてはなりません。無機塗料の特徴を正しく理解したうえで、信頼できる業者に施工を依頼しましょう。
外壁に無機塗料の施工を検討されている方は、ぜひペイプロをご利用ください。ペイプロは、外壁塗装の専門業者を比較・紹介してくれる無料のマッチングサービスです。厳選された優良な外壁塗装業者を紹介しているため、無機塗料の施工に対応している業者も揃っています。ご相談は無料で行っておりますので、お気軽にお問い合わせください!
※1参照元:日本ペイント「グランセラ™トップ 2液水性
(旧:パーフェクトセラミックトップG」(https://www.nipponpaint.co.jp/products/building/338/)
※2参照元:関西ペイント「アレスダイナミックMUKI」
(https://www.kansai.co.jp/alesdynamic/muki/index.html)
※3参照元:プレマテックス「ウルトラMUKI」
(https://www.ultra-paint.com/product/ultra-muki/)
※4参照元:アステックペイント「無機ハイブリッドウォールJY」
(https://astecpaints.jp/products/detail/56)
※5参照元:エスケー化研「エスケープレミアム無機」
(https://www.sk-kaken.co.jp/product/overcoat-materials/sk-premium-muki/)
※6参照元:ペイントライン「無機ハイブリッドチタンガード」
(https://www.paint-line.jp/paints/muki/)
※7参照元:関西ペイント「アレスダイナミックMUKI」
(https://www.kansai.co.jp/alesdynamic/muki/index.html)