家の壁面のサイディングは、その劣化が分かりにくいため、ついそのままにしがちですよね。しかしサイディングは年数が経つと、外壁自体やその内部が劣化している場合が多く、耐震性が低下するおそれもあります。
この記事ではサイディングの張り替えの必要性や費用相場、予算感、安くするコツなどを解説します。
サイディング張り替えはなぜ必要?
サイディングの張り替えは、古いものをすべて剥がして新しいものに張り替える施工です。そして他の外壁工事と異なる点は、現在の壁材をすべて取り除くことと、内部の劣化状況に応じて、下地の補強施工をすることです。
サイディング張り替えの必要性
施工したサイディングに一定以上の年数が経つか傷みが出てきた場合、ー部分補修や塗装、重ね張りといった補修作業では補えなくなります。
サイディングの劣化で防水性や耐震性が低くなり、放置すれば家の傷みが進んでしまうため、貼り替えを行います。そしてサイディング本体だけでなく、内部の下地や防水シートも一新するので、家の寿命を延ばすことができます。
また、サイディングはその普及によって質感が向上し、新しい素材もたくさん登場しているので、家のデザインを一新できる効果もあります。
サイディング貼り替えの時期
サイディングは、早いものでは施工から25年経過するとメンテナンスの対象となり、30年から40年で、張り替えが行われることが多いです。
また、外見の劣化と関係なく、サイディングの寿命や劣化の進行があるため、新築から25年を過ぎたら専門的な診断を受けておくと安心です。
サイディングのリフォームが必要な症状は?
以下の症状が、サイディングの張り替えのサインとなる症状です。
- 色褪せ
- サビや腐食
- 塗膜の膨れや剥がれ
- チョーキング
- 下地の劣化
- 外壁を押すと柔らかい、ふかふかする
- 反りやひび割れ
- ボロボロ崩れ落ちたりする
触るとチョークの粉のようなものが手に付く状態がチョーキングです。チョーキングを起こした壁面の特徴として、雨などに濡れた部分が濃く変わることでも判断できます。
チョーキングは外壁塗料の防水の効果が薄れた状態です。したがって、放置していると雨水などが建材の中に侵入して家全体が傷んでしまいます。
また、押すと柔らかくなっている箇所がある場合は、サイディングだけでなく下地部分にも傷みが広がっている可能性があります。
サイディングのほかの補修方法
壁面の状態によっては、サイディングの張り替えにまで至らず、ほかの補修で済む場合があります。
塗装工事
外部のひび割れが浅かったり、表面の塗料が少し剥げているレベルなら、元のサイディングのまま、塗装だけでも対応可能なこともあります。
塗り直しに使う塗料はサイディング材や表面の塗料との相性を確認するか、補修専用の塗料を使用します。
張り替え以外のこれらの施工は、壁面の延命に効果があります。しかし新しめのサイディング壁面の場合の、一時的な処置と言えます。
現時点で築30年を経過したころのサイディングは、直貼り工法でアスファルト防水シートを採用しています。したがって現在のものより気密度の高い施工が多く、表面はきれいでも内部に傷みが広がっていることも多いため、張り替えの判断は専門的な診断をおすすめします。
サイディングの補修
傷みがひどくない場合、部分補修で簡易的に施工をしておくと、傷みが広がりにくくなるため安心です。
サイディング材の接合部は、もとのシーリングとプライマーを除去して目地をきれいにし、新しいプライマー、シーリングを補充します。
また、サイディング材に反りやひずみが出ている場合は、サイディングを留めるねじの数を増やして固定し直しましょう。
重ね張り(カバー工法)
重ね張り=カバー工法は、既存のサイディングの上から新しいサイディング材を重ね張りするメンテナンス施工です。
劣化が元のサイディングの内側まで進んでいない状態の場合、この方法で施工可能な場合もあります。また、外壁が二重になることで、断熱性や遮音性の向上が期待できる場合もあります。
また、重ね張りの場合、古いサイディングを剝がさないので工期は短くなり、工費も安くできます。
サイディングの張り替え工事の内容
サイディングは、4種の材質それぞれにとても多くの商品があり、それぞれ持ち味が違うほか、張り替えのための予算も異なります。この項では、サイディングの材質ごとの特徴と、工事の方法をなどをご説明します。
サイディングの種類と特徴
サイディングは大きく分けて以下の4種類の材質があり、張り替えで様々な素材感の外壁を演出することが可能です。
- 窯業系サイディング
- 金属サイディング
- 樹脂サイディング
- 木質系サイディング
それぞれの特徴をご説明します。
窯業系サイディング
セメント質と繊維質を主な原料として製造される窯業系サイディングは、最も普及しているサイディング材です。また、張り替え施工が簡単で施工できる業者が多く、工期も短いです。
また、デザインの種類が多く、素材自体の価格も安いため、工事金額も安価です。
目地部分のコーキング材の劣化が見えたら、サイディング自体に問題はなくても、張り替えなどの修繕を要するケースが多いのが注意点です。
金属サイディング
サイディングの中で2番目にシェアが高く、デザイン性の高い製品も多く流通しています。ガルバリウム鋼板やアルミニウム合金といった種類があります。
素材が軽く、錆は出にくく、耐震性や耐熱性にすぐれています。しかし施工時の初期費用、張り替え時のメンテナンス費用は高めです。
樹脂サイディング
樹脂製のサイディングは塩化ビニール素材で、軽量で対候性が高く凍害に強いため、北米では非常に普及率が高いサイディング材です。
北海道・秋田・新潟などの寒冷地では、張り替え時にも樹脂系サイディングの外壁を採用するケースは比較的ありますが、全国的に見ると1%ほどの普及率となっており、施工の依頼先が探しにくい場合があります。
木質系サイディング
木材の表面を加工して、防水性や耐火性などの機能を加えたサイディング材です。温もりのあるデザイン性の高さと、熱を吸収しにくく断熱性に優れるのが特徴です。
窯業系や金属のサイディングにも、木材の質感を再現した製品があります。しかし天然の無垢材を使用したものは、本物の高級感が感じられます。
難点は、樹脂サイディングと同じで日本でのシェアが高くないため、張り替え施工できる業者も少ないことです。
上記の4種類のほかに、ALCパネル(発泡コンクリート)も、傷みの進行具合によってはサイディング同様張り替え工事を行うことがあります。
サイディングの張り替え工事の方法
張り替え工事は、以下の工程で進めていきます。
張り替え工事の工期は長く、既存のサイディング剥がしで約14日、新しく張るのに約10日、エアコンや給湯器を元に戻すなどの作業も行って、合計約1ケ月に及びます。
- 足場の設置と養生作業
- 現在のサイディングを剥がす作業
- 内部の劣化症状の確認
- 劣化箇所に下地や断熱材、防水シートなどを補強
- 新しいサイディングに張り替え、目地をシーリング材で充填
- 施工後の点検作業
- 足場の解体と設備の現状復旧
サイディング張り替えの費用は?
古いサイディング張り替えの際の平均的な費用相場や、張り替え作業の内訳ごとの平均的な費用をご紹介します。
サイディング張り替えの価格相場
古くなったサイディングの張り替え工事の一般的な費用相場は170〜250万円です。また、重ね張りの場合で100~220万円程度となります。
施工費用は使用するサイディングの種類でも価格幅が出ます。以下はサイディングの種類別の平均の張り替え施工単価の違いです。
サイディング材の種類別・施工単価の相場
サイディング材 | サイディング材の特徴 | 費用相場 |
---|---|---|
窯業系サイディング | ・日本で最も多く使用されている ・デザインが豊富 ・ほかの外壁材より安く張り替え施工可能 | 約4,000~5,000円/㎡ |
金属系サイディング | ・窯業系サイディングの次に人気が高い ・金属素材のため衝撃に強い ・特に寒い地域では適性が高い | 約6,000~9,000円/㎡ |
樹脂系サイディング | ・耐用年数が30年ほどと長い ・防火性、防水性に優れ、凍結やサビの心配もない ・日本での取り扱いが少なく、施工業者が限られる | 約7,000~9,000円/㎡ |
木質系サイディング | ・本物の木の表面を加工し、耐火性などの機能を追加 ・断熱性が高い ・取り扱い業者が少なく費用は高い | 約6,000~10,000円/㎡ |
この表の価格は外壁面積1㎡あたりの張り替え単価です。外壁面積の目安は、延べ床面積×1.2で求めます。
たとえば30坪の家で窯業系サイディングを張り替え施工した場合の、施工部分のみの価格は、
30×3.3×1.2×5000円で、59万4,000円となります。
サイディング張り替え工事の見積もりの内訳
以下は窯業系サイディングの張り替え工事の見積もり例です。足場や元のサイディングの撤去費用ほかを含めると、以下のような金額となります。
項目 | 単価 | 数量 | 単位 | 金額 |
---|---|---|---|---|
窯業系サイディング | 5,000 | 120 | ㎡ | 600,000 |
元のサイディングの解体・撤去費用 | 1,500 | 120 | ㎡ | 180,000 |
足場設置代 | 700 | 200 | ㎡ | 140,000 |
養生シート代 | 500 | 200 | ㎡ | 100,000 |
土台(糖質防水シート) | 300 | 120 | ㎡ | 36,000 |
土台(水切り板金) | 1500 | 120 | ㎡ | 180,000 |
土台(胴縁) | 1500 | 120 | ㎡ | 180,000 |
シーリング | 800 | 250 | ㎡ | 200,000 |
運搬費・諸経費 | 150,000 | |||
小計 | 1,766,000 | |||
消費税 | 141,280 | |||
合計 | 1,907,280 |
足場や養生シートは壁面から離して設置するため、㎡数が120㎡より多くなります。水切り板金とは、屋根と壁の境目の防水板、胴縁はサイディングを取り付ける下地材の施工です。
張り替え施工全般で価格が上下する要素は、新しいサイディングの種類のほか、下地の傷み具合による補修の度合いが影響します。
【助成金・火災保険】サイディング張替えを安くする
「思ったより費用がかさむ」と思われた方のために、サイディングの張替え費用を抑えるためのコツをご紹介します。どの方法も可能というわけではありませんが、参考にしてください。
外壁の補修に助成金を申請する
サイディングの張り替えで助成金を申請できる根拠は、以下のようにいくつかの種類があります。
- 建物の外壁が熱を保持しにくくして、ヒートアイランド対策となる
- 光熱費が下げられ、省エネルギー化が達成できる
- 耐久性の高い建材で、資材の節約となる
このほか外壁改修全般の助成金として、移住や空き家対策対象のリフォーム支援に、サイディングの施工や補修も含む場合があります。
助成金は張り替えなどの施工費用の10~20%を上限10万~30万円で支給する地域が多いですが、助成の主旨によってはそれ以上の助成率の制度もあります。
助成金の申請をする際には、以下のような点に注意しましょう。
- 自治体に現在は外壁工事を対象とする制度がないケースがある
- 交付の決定前に着工された外壁工事は助成の対象外となる場合がある
- 税金の滞納があると受理されない可能性がある
- 建物の見取り図や平面図が必要なことがある
- 申請や認定には時間がかかるケースがある
- 助成金の支給は工事費支払い後となる
助成金申請の条件やスケジュールなどは、張り替えの施工業者と相談しながら行うと、サポートしてもらえます。
火災保険を利用する
経年劣化ではなく、台風などの自然災害によってサイディングが損傷した場合、張替え費用は火災保険でまかなえる可能性があります。
サイディング張り替えの保険適用は、以下のようなケースで認められます。ただし、風災では部分破損のことが多いでしょう。家全体のサイディングの張り替え工事に部分破損適用が認められるかは保険の加入内容にもより、保険会社との相談となります。
近年の火災保険は、被害に応じた支給ではなく、施工された内容に対する補償となるためです。
火災保険で補償される基準
風災 台風・竜巻・雹災・雪災 | 〇認められる | ・台風による強風や突風で外壁材が破損 ・竜巻や台風悲惨物が壁にぶつかり、穴があいた ・雹(ひょう)が外壁に当たり破損した ・大雪で壁材が破損した |
---|---|---|
✕認められない | ・損害額が20万円以下 ・経年劣化による色あせなど ・風速20メートル/秒以下の風による被害 | |
水災 洪水・高潮・土砂崩れ | 〇認められる | ・台風で川が氾濫し、浸水で壁面に被害が出た。 ・豪雨で土砂崩れが起き、家の半分以上が破損した |
✕認められない | ・お風呂のお湯が出しっぱなしで、壁が濡れた (別に対応する保険がある) |
地震保険も、地震に起因する壁面の破損に申請できますが、被害規模が小さいものは免責となり、経年劣化は対象外である点は同じです。
繰り返しますが、助成金は利用できない場合もあり、火災保険や地震保険は経年劣化に対しての補償はありません。悪徳業者の「張り替え工事に必ず助成金や火災保険が使える」かのような宣伝文句には、注意しましょう。
複数の業者から相見積もりをとる
複数の業者から見積もりをとることで、適正な張替え費用がわかります。また、業者と価格の交渉をするときも、他社の見積りが役に立ちます。
見積もりをよく確認の上、サイトで口コミや施工例などをよく確認しましょう。価格だけにとらわれす、良心的な業者を探すことで、施工不良や不当な料金追加を回避するのも大切です。
長期的な維持費を下げる
サイディングの張り替えのインターバルを長くして、張り替えの回数を減らすなどが可能です。
サイディングの種類別の寿命ですが、窯業系は20〜40年、木質系は15〜30年、樹脂系は20〜30年が、張り替えまでの平均的な耐用年数とされています。
たとえば窯業系の中でも耐用年数が長めのものを選んで施工し、定期的に状態をチェックしたうえで、傷んだ箇所の部分補修をしておけば、張り替えまでのインターバルを長くできるでしょう。
また、チェックの時点で傷みが進んでいない場合、カバー工法で施工でき、全面張り替えよりも費用が安くできます。
サイディング張り替えはDIYでできる?
サイディングの張り替えのDIYは、部分補修などを中心に、できないことはありません。ただしその際は、専門家に壁面の状態を確認してもらった上で、プロに任せるかを検討しましょう。
DIYでできるレベルの補修
コーキングの追加施工、部分的な張り替え、全面張り替え工事までのつなぎに簡易的に塗装しておくなどは、DIYでも比較的やりやすいです。
DIYでのサイディング張り替えのリスク
サイディングの張り替えの際は、必要に応じて2階壁面の下端と屋根の境目にある水切り板金をやり直したり、サイディングを固定する胴縁を更新したりするなどの作業も行う必要があります。
注意点として、Webサイトで得た張り替え施工の知識が自宅の壁材に合っていなかったり、正しくない場合があります。また、経験不足から間違った張り替え補修をすると、見栄えや機能面の状態が改善されず、かえって悪化することもあります。
そのあたりを踏まえて、専門家のアドバイスを得て張り替え作業する必要があります。そして、高い場所での作業は転落の危険が伴うので、安全策は万全にして作業しましょう。
サイディング張り替え業者の選び方
Webサイトや知人の紹介なども利用して、候補となる張り替え業者の情報収集をしましょう。業者の張り替え工事例や、口コミ等で評判や顧客対応の確認をします。
ただし口コミは誰でも好きに書き込める場合も多いので、内容はそのまま鵜呑みにしないようにします。また、訪問営業に乗ってそのまま張り替えを発注するのは絶対に避け、必ず他の業者との比較を行ってください。
良心的な業者選びは、ぜひペイプロへご相談ください。
サイディング張り替え業者の選び方のポイント
サイディングの張り替えを依頼する業者を選ぶポイントは、以下の点をチェックしましょう。
- サイディング外壁の張り替え実績が多いか
- こちらの話を丁寧に聞いてくれる
- 張り替え施工の説明が丁寧
- アフターフォローや保証内容が充実している
- 有資格者の在籍や会社の資格
- 自社で張り替え施工を行う
サイディングの張り替え関係の資格は、外装劣化診断士や雨漏り診断士、防水施工技能士の保有者が在籍すること、会社が建設業許可を受けているなどが、ひとつの判断基準になります。
保証体制の基準として、リフォーム瑕疵保険への加入があります。リフォーム瑕疵保険加入の場合、張り替え工事の施工中や工事完了後、第三者検査員による現場検査が行われます。
質の高い施工が確保され、万が一施工不良が出た場合も、保険修理が依頼できます。
サイディング張り替え・依頼から工事まで
ここまでのおさらいを兼ねて、サイディングの張り替えの依頼から施工工程の順番や、必要な日数などをご確認ください。
サイディング張り替え依頼までの流れ
施工の依頼先を決定し、張り替えに着工するまでの流れをご確認ください。
業者の情報収集 | 事前にサイディング工事の基礎を知っておくと、良い。 |
---|---|
相見積もり依頼 | 見積書の内容や担当者の対応から、絞り込みをする。 |
工事の方針決め | 全面張り替えか部分補修かなど。業者に相談。 |
1社に絞り、依頼先を決定 | 価格・施工内容ともに良心的な業者を選んで依頼する。 |
工事打合せ | 養生や付帯工事、スケジュールなどの確認打ち合わせ。 |
サイディング張り替え工事の流れ
張り替えに着工してから、完工までの流れは以下です。日数は施工内容のほか、天候などにも左右される可能性があります。
足場の設置・養生 | 狭さなど現場の状態によって、若干工期が延びる。 | 1~2日 |
---|---|---|
古いサイディングを剥がす | サイディングを剝がし、内部の劣化症状の確認。 | 14日 |
下地や断熱材、防水シートなどを補強 | 傷んだ箇所の補修、補強。 | 1~2日 |
サイディングを張り、隙間をシーリング材で充填 | 新しいサイディングの張り替え施工。重ね張りの場合はこの工程の前は4~6日ほど。 | 10日 |
施工後の点検・住宅設備の復旧 | 防水の漏れがないかなどを点検。室外機や給湯器を元に戻す作業。 | 1~2日 |
足場の解体 | 養生を取りはずし、足場を片付ける。塗装でなければ飛散防止シートはなし。 | 1~2日 |
まとめ
サイディングの張り替えの必要性や費用相場、予算感、安くするコツなどを解説しました。どこまでの施工にするかや、どんな種類のサイディングに張り替えるか、色はどうするかなど、業者決定後にも、決める要素はたくさんあります。
サイディングの張り替え施工の成功には、安心して相談できる業者を見つけるのが大切です。
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