屋根塗装の縁切りとは?重要性や手順を解説!

屋根塗装の際に、縁切りという工程が必要だということを知っている方は少ないでしょう。見積もり内容や作業内容の確認をするためにも、工程への基礎知識を持つことは大切です。

この記事では、屋根塗装の縁切りとはどのようなものか、重要性や手順などを解説します。これから屋根塗装を依頼したい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

屋根塗装の縁切りとその重要性

屋根塗装の縁切りとその重要性

縁切り(えんぎり)とはどんな作業で、なぜ必要なのでしょうか?

屋根塗装の縁切りとは何か?

屋根の再塗装の際に、屋根材同士が塗料で張り付いた状態を切り離しておくことを縁切りと言います。塗料が乾燥して、塗膜でふさがってしまった部分を切り離し、雨水や空気の通り道を確保します。

縁切りは、スレート瓦の塗装工程では、条件次第で必ず必要な作業工程です。

塗装の縁切りが必要な屋根は?

縁切りが必要な屋根は、スレート屋根(コロニアル、カラーベスト)です。

スレート屋根はスレート瓦とも呼ばれ、天然の粘板岩を薄く加工したものや、セメントに繊維状の素材を混ぜたもの、パルプなどの石綿以外の繊維と、セメントを混ぜたものなどを、屋根材として使用します。

2006年頃まではセメントに石綿(アスベスト)を混ぜた素材も、スレート瓦の材料として生産されていました。しかしアスベストの健康被害の問題が起きてからは、全面的に禁止となっています。

現在スレートの主流となっているのは、石綿以外のパルプなどの繊維とセメントを混ぜた、ノンアスベストのスレートです。

スレート屋根はその形状が薄い板状になっています。そこに塗料を塗布すると、狭いすき間が塗料で塞がってしまうため、塗装の際には、縁切りの作業が必要になってきます。

このほかに、セメント瓦の塗装の際にも、縁切りの施工が必要となる場合があります。(粘土瓦は塗装を行いません)

屋根塗装の縁切りの重要性

屋根塗装の縁切りの重要性

なぜ塗料で隙間が塞がるのが良くないのでしょうか?それは、屋根に隙間がなくなると、屋根の正常な水はけが発揮できなくなるためです。

塗料で塞がった状態を縁切りで防いだり補正することで、雨水が正常に排水できるようになるのです。塗料で塞がったままでは、毛細管現象で屋根材が雨水を蓄えやすくなり、同時に逃げにくくなります。雨水を蓄える形になるうえ、結露も起こりやすくなります。

結露は、屋根の内側と外側の気温差が生じた際に発生します。建物の中の暖かい空気は上昇する性質があるため、天井を通して屋根裏まで上昇し、屋根の下の空気を暖めます。

一方で、屋根の外側は外気と接しているため日中は屋内より熱く、それ以外の時間は寒い状態となります。屋根の内側が温まり、屋根外側が冷えるため、結露が発生してしまいます。

縁切りで作る屋根の隙間がない場合、屋根裏で内部結露した水分が滞留し、中の断熱材や木材を傷めてしまいます。

屋根材のすき間がなければ通気も悪くなるため、屋根はさらに乾きにくくなります。屋根が蓄えた水が凍結すると、変形したり壊れたりするなど、傷みが進行してすることになります。

屋根裏や屋根の湿度や通気の管理が悪くなると、こんなにもさまざまな問題が起きてしまうのです。

屋根塗装の縁切りの施工方法

屋根塗装の縁切りの施工方法

縁切りの施工方法には、塗料を切り離す従来の方法と、屋根のすき間を拡げておいて塗膜で塞がない、タスペーサーを使った工法の2種類があります。

塗料を切り離す従来の方法

昔から行われていたのは、カッターや革スキ(スクレーパー)を使って、瓦の合わせ目に固着した塗料を切り取ってゆく作業です。

塗料が乾燥して固まったあとに行う必要があるため、ある程度乾燥させてから行います。屋根材を傷つけたりしないよう、丁寧さかつ、慣れが必要な作業です。

カッターやスクレーパーを使った縁切りは地道で手間がかかり、また、足場を解体したら施工の状態は見えなくなってしまうため、省略されがちで、作業内容も不明確です。

工程の煩雑さと慎重さが必要なこともあり、従来の塗膜を切り取る工法は、最近はほとんど行われなくなっています。

タスペーサーを使った方法

最近主流の方法は、タスペーサーという部品を下塗り前か下塗り後に屋根の下に差し込み、すき間を作ってから塗装をする方法です。1枚のカラーベスト屋根材に15センチ間隔で、2枚のタスペーサーを使います。

挿したタスペーサーは、施工後もそのまま残すため、施工の状況は目で見て確認できます。従来の工法では、30坪程度の家の屋根で職人2人・丸1日かかるところを、タスペーサー施工は1人で約2~3時間で作業が完了します。

また、従来の工法にくらべて、屋根につける足跡や傷、屋根材の破損のリスクが少ないと言えるでしょう。

タスペーサーには2種類


形状や素材が異なるタスペーサー01とタスペーサー02という2種類があります。
タスペーサー01は三角形で、屋根材の下に差し込んで使用します。一方のタスペーサー02は丸型で、屋根材の上に乗せて使用します 。

タスペーサー01とタスペーサー02の違いは、以下を参考にしてください。

項目タスペーサー01タスペーサー02
三角形丸型
素材プラスチックプラスチック
使用方法屋根材の下に差し込む屋根材の上に乗せる
耐久性高い低い
作業時間短い長い
作業難易度高い低い
コストパフォーマンス高い低い

屋根塗装の縁切り工事の費用

屋根塗装の縁切り工事の費用

工事費用は工賃と材料費に分かれます。

従来の工法は道具使用のみで材料費は不要です。一方タスペーサーの工法は、材料費がかかります。

工事費用の内訳

30坪の家の屋根で比較して試算すると、下記となります。

工法費用相場内訳
従来工法約8万円施工単価:1平方メートルあたり800円程度
タスペーサー工法10万円弱施工単価:450円/㎡前後で、30坪で4.5万円前後

材料費:30坪で1,000個・3~5万円前後

一般的にタスペーサーの工法の方が、従来の切り離しの施工に比べ、2~3万円高くなるようですが、屋根の傷みが少なく、工事ごとの耐用年数が長くなる分お得という考え方もありますね。

DIYは可能?

DIYは可能?

費用を浮かせたい場合、屋根の塗装や縁切りはDIYで可能でしょうか?

作業の安全性

2階建ての場合、家の高さは7~9mもの高さになり、プロのでも安全を考慮し、足場を設置して作業を行います。DIYで作業する場合、ハシゴや脚立を使い作業する場合がほどんとですが、不安定で、倒れた場合には大けがの恐れがあります。屋根に上がって塗装などの作業をする際、足を滑らせ滑落する危険もあるでしょう。

慣れの違い=仕上がりの差

外壁塗装は洗浄や下地処理、補修などの作業に時間をかけず不十分だと、施工不良につながる可能性があります。また、市販のDIY用の塗料は主に1液水性タイプで、塗りやすい反面耐久性が劣る場合があります。

慣れない場合時間とお金がかかる

外壁塗装は多くの工程を要するため、プロの塗装業者でも2~3週間かかります。一般の方が仕事の合間に進めれば、2か月などはすぐ経ってしまいます。

そして、塗装を自分で行う場合、屋根塗装用の道具を全て揃えると、何度も使わないものに、約20~30万円かかります。

以上のことから、DIYの作業はおすすめできません。

屋根塗装の縁切りのトラブル

屋根塗装の縁切りのトラブル

縁切りは、必要な状況なのに施工されていないと、家を傷めるトラブルに発展します。縁切りの作業の省略や、正しい縁切り作業が行われないと、どのようなトラブルが起きるのでしょうか?

正しい縁切りをしない場合のトラブル

縁切りに問題があると、具体的には下記のようなトラブルが起こります。

  • 通気性の悪化
  • コケやカビの発生
  • 下地材の腐食
  • 雨漏りの発生

これらは、屋根の塗料の耐用年数を過ぎても、長年放置してしまった際に起きるトラブルとほぼ同じです。屋根にとって、排水や通気がいかに重要かが分かります。

屋根材そのもの以外にも、屋根材の下の野地板や建材が腐敗したり、雨漏りの発生につながり、屋根塗装自体の耐用年数も短くなってしまいます。

縁切り施工の質が良くない場合のトラブル

従来の工法で手作業で行う場合などに多いのは、屋根材を傷つけ、そこから傷みが広がるケースです。

また、塗装の終わった屋根を踏みながら作業するため、乱暴に移動すると屋根の表面に汚れや傷がつくほか、割れて亀裂ができるリスクもあるでしょう。

屋根は垂直方向に雨水が漏らないように防水し、最下部の雨どいまで排水する構造になっています。屋根材に亀裂ができれば、下の建材にじかに雨水が伝い降りてしまいます。

縁切りをやらないときのトラブル

不十分というレベルでなく、縁切りを一切行わなかった場合は、上記の傷みの進行が更に早く進み、最悪は屋根裏の建材そのものに腐食の影響が広がったり、複数個所で雨漏りが起きたりする可能性があります。

縁切りを行わないと、屋根塗装を行ったことでかえって家を余計に傷めてしまうことになりかねません。

屋根塗装で縁切りしていない原因は?

屋根塗装で縁切りしていない原因は?

縁切り作業が行われていない場合、どんな理由があるのでしょうか?

悪徳業者の手抜き施工

悪徳業者の手口として、見積もりでは費用を安くし、手抜き施工で工賃やタスペーサーの材料費を浮かせる目的で、縁切りを行わない場合があります。

施主に知識がなければ、気づかないまま工事は完了し、何年かあとに早期の雨漏りなどで気づいたときには、業者に連絡が取れないことも。

逆に不要な状態の屋根に、縁切りを行ったように請求されることもあり得ます。価格だけでなく、良心的な業者の見極めが大事です。屋根塗装の業者選びは、ペイプロをご活用ください。

縁切りが不要なケース

屋根の塗装の際に、以下のように縁切りが不要なケースもあります。

縁切りが不要な屋根塗装

  • 新築後、初めての屋根塗装
  • 急傾斜の屋根
  • 経年劣化で屋根の先端が反っている
  • 吹き付け塗装の屋根
  • 塗り替え不要な屋根材


まず、縁切りが確実に必要なのは2回目以降の塗装時で、初回の塗装時に縁切りは必要ないこともあります。初回の塗装の頃で、紫外線の影響で屋根材の縁が上側に向かって反っていて、すき間が大きいケースです。

この他、すき間が4ミリ以上空いている場合はタスペーサーを施工できず、する必要もありません。

また、屋根の勾配が大きく水はけのよい屋根や、吹き付け塗装の屋根も、縁切りが不要な場合が多いです。

屋根塗装はおもに「ローラー塗装」と「吹付け塗装」があり、吹付け塗装は屋根材の隙間にまで塗料が届かないため、縁切りは不要となります。

屋根塗装の縁切りトラブル回避のために

屋根塗装の縁切りトラブル回避のために


スレート屋根塗装の縁切り作業にまつわるトラブルを回避する方法を、ご紹介します。

施工前後の確認

まず、見積もりの段階で縁切りの工賃や、タスペーサーの材料費が含まれているかを確認しておきましょう。見積書は工程表とともに、書面化してもらっておきます。

また、工事の完了後に、写真付きの報告書をもらうようにしましょう。縁切り・タスペーサー挿入の工程が実際に行われているかを確認するようにします。

従来のカッターナイフやスクレーパーを使った工法では、正しく作業が行われたかを確認するのは難しいので、過程を写真に残してもらうのが確実です。

縁切りされていないことが分かったら

施工直後であれば、縁切りを依頼します。もしも年数が経過したあとであれば、まず屋根と屋根裏の状態を確認し、雨漏りなどの問題がないかを専門業者にチェックしてもらいましょう。

そして、再施工をしてもらえないなどのトラブルに発展した場合は、次項の方法で相談しながら交渉しましょう。

屋根塗装の縁切りの欠陥施工への対処法

屋根塗装の縁切りの欠陥施工への対処法

縁切り施工のトラブルに見舞われた場合、以下の手段で解決のためのサポートを受けてください。

  • 消費者生活センター(消費者ホットライン)
  • 住宅リフォーム紛争処理センター(住まいるダイヤル)
  • クーリングオフを適用
  • リフォーム瑕疵保険を利用

リフォーム瑕疵保険は塗装の施工業者が事前に加入している必要があります。クーリングオフ制度は、消費者が商契約をキャンセルできる権利です。トラブルと感じた際には、クーリングオフの対象となるかも含めて、以下の連絡先に相談しましょう。

縁切りの欠陥施工の相談先消費者ホットライン:    188(局番なし)
住まいるダイヤル:    0570-016-100 / 03-3556-5147

まとめ

屋根塗装の縁切りのまとめ

屋根塗装の縁切りとはどのようなものか、重要性や手順などを解説しました。

縁切りやタスペーサー施工のような知識がない場合、工程を省略されても気づくこともできませんね。また、塗装工事は施工の前後からよく内容を相談、確認することが大切です。

縁切りを省略せず、ご自宅の外壁塗装を丁寧に行ってくれる業者を見つけるために、ペイプロの利用をおすすめします。

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