外壁塗装の「養生」とは、塗料が不要な場所に飛び散るのを防ぎ、建物や周辺設備を保護する工程です。見た目の仕上がりや塗装トラブルのリスクを左右する重要な作業でありながら、具体的な内容や費用を十分に理解できていない人も多くいます。この記事では、養生の役割・工程・注意点を初めての方にもわかりやすく解説します。外壁塗装で後悔しないために、ぜひ参考にしてください。
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監修者:井上咲
保有資格:宅地建物取引士
ビルオーナー業にてテナントとの契約業務、商業ビルの買収、不動産管理などを担当。現在は専業ライターとして、専門知識や実務経験を活かし、数多くの不動産関連メディアにてライティングやディレクションに携わっている。
外壁塗装における養生とは?

外壁塗装における「養生」とは、塗装が不要な箇所への塗料の飛散を防いだり、工事による他の部分の損傷などがないよう、保護する作業のことです。具体的には、玄関ドアや窓、室外機、車などにビニールやテープを使ってカバーをかけ、飛散や汚れ、損傷を防ぎます。
外壁塗装工事では、塗料がローラーから飛び散ったり、風により塗料が拡散してしまうことがあります。
また、塗装の仕上がりを美しく整えるには、きちんとしたマスキングが欠かせません。
外壁塗装における養生の目的をまとめると、以下のとおりです。
- 塗料の飛散防止
風の影響などで塗料が車や隣家、庭木などに付着するのを防ぎます。 - 塗装面以外の保護
窓・ドア・ポスト・室外機など、塗装の必要がない設備をしっかり覆うことで、損傷や汚れを回避できます。 - 塗装の仕上がり品質の向上
色の境界線をくっきりと出すなど、見た目の美しさを保つための下準備としても重要です。
このように養生は、美観・安全・近隣配慮のすべてに関わる重要工程です。
外壁塗装で養生が必要な場所

実際の住宅や周辺環境の状況により必要な養生は異なりますが、特に以下の4つのエリアでは、生活への影響・近隣トラブルを避けるためにも丁寧な養生が欠かせません。
- 生活設備まわり
- 外構まわり
- 車両等
- 足場設置時の養生
それぞれのポイントと注意点について、順に解説します。
生活設備まわり

まずは玄関や窓、室外機など、外壁に接する生活設備への養生が必要です。養生する際は、普段の生活に支障が出ないよう配慮しなければなりません。工事期間・養生中はどのように生活設備を使用すべきか、事前に業者と話し合っておくことも重要です。
養生場所 | 方法・注意点 |
窓・サッシ | 塗料が飛ばないようビニールで覆う。換気が必要な窓は開閉可否を業者に事前に伝える。 |
玄関ドア | 出入りに支障が出ないよう開閉可能な状態で養生。ビニールがバタつかないよう丁寧に固定。 |
エアコンの室外機 | 通気性のあるカバーで保護。運転の有無によって養生方法が異なるため、使用予定を事前に相談。 |
換気扇・給湯器 | 気口を完全に塞がないように注意し、安全性を保ちながら最低限の養生を行う。 |
外構まわり

建物周辺の外構も塗料の飛散による汚れの対象となるため、丁寧な養生が欠かせません。特に住宅密集地や庭のある戸建て住宅では重要性が高まります。
養生対象 | 方法・注意点 |
ベランダ・ウッドデッキ | 床面や手すりをシートやテープでしっかり保護。木材部分は塗料が染み込みやすいため、特に入念な養生が必要。 |
植木・花壇・芝生 | 植物には通気性のある不織布などで優しく覆い、水やりや採光を妨げないよう注意。密閉しすぎないよう配慮が必要。 |
車両等

玄関前や庭に置いている車・バイク・自転車なども塗料が飛散して汚れるおそれがあります。塗料による汚れで余計な修理や清掃費用がかからないよう、備えておきましょう。
養生対象 | 方法・注意点 |
自家用車・バイク | 一時的に別の場所へ移動するのが理想。難しい場合は、専用カバーや厚手のビニールで全体を覆い、風でめくれないように固定する。 |
自転車・ベビーカーなどの軽車両 | 屋内や別スペースに一時保管するのが望ましい。保管が難しければ、カバーをかけて養生し、風によるズレを防ぐ。 |
また、車の出し入れがある家庭では、施工日程との調整が必要です。何日にどこへ移動すればよいか、あらかじめ業者と確認しておきましょう。
外壁塗装工事での足場

外壁塗装では、 高所作業用の足場が設置されます。 足場にも塗装工程と同様に養生が必要です。足場の養生は、工事全体の安全性や近隣との関係性に影響します。
養生対象 | 方法・注意点 |
メッシュシート(飛散防止ネット) | 足場全体を覆って塗料の飛散や工具の落下を防止。通気性のある素材を使用し、特に住宅密集地や道路沿いでは必須。 |
隣地・道路との境界部分 | 足場が隣家に接する場合は、シートの二重張りや厚手のカバーで接触を防止。歩道側ではカラーコーンや注意書きなどで通行人に配慮する。 |
庭木・塀・物置などの構造物 | 足場が接触する可能性がある部分は、クッション材やシートで覆い、傷や破損を防ぐ。 |

養生で使う資材の種類と特徴一覧

外壁塗装で使用される養生資材には、用途や対象に応じてさまざまな種類があります。現場や保護対象に適した資材を選ばなければ、塗料が隙間から漏れたり、養生が剥がれて思わぬ損傷や近隣トラブルを招いたりすることもあります。
代表的な養生材の種類と特徴を一覧で確認しておきましょう。
【主な養生資材の比較一覧】
養生資材 | 主な使用箇所 | 特徴・メリット |
マスカー(養生テープ一体型シート) | 窓・サッシ・ドアまわり | 幅広のテープとビニールが一体化。時短・簡単施工が可能 |
マスキングテープ | 境界線や細かい部分の保護 | はがしやすく、仕上がりをきれいに保てる |
養生ポリシート | 地面・壁面の広範囲保護 | 大面積を一気に覆える。コストも安価 |
ノンスリップシート | 玄関前・通路などの歩行エリア | 滑り止め機能付きで安全性が高い |
メッシュシート | 足場全体 | 塗料の飛散防止、風通しも確保できる |
養生用布シート | 車・バイク・大型設備など | 分厚く丈夫。傷や衝撃からしっかり保護 |
養生資材は見積もりにも記載されるため、把握しておくことで業者との意思疎通も図りやすくなります。
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塗装における養生の費用相場

外壁塗装では、「養生」の工程や資材についても費用がかかります。ここでは、具体的な費用相場や内訳、見積もり時のチェックポイントについて解説します。
養生の費用相場|㎡単価と全体予算の目安

養生の費用は、一般的に「1㎡あたり300~500円前後」が相場とされています。この金額には、使用される養生材(ビニールシート・マスカー・テープなど)や施工の手間代が含まれます。
たとえば、延床面積30坪(約100㎡)の戸建て住宅では、養生にかかる費用は概ね以下のとおりです。
項目 | 内容 | 目安費用(税抜) |
養生材(ビニール・マスカー等 | 材料費 | 約1万~2万円 |
養生作業費 | 養生の設置・撤去にかかる人件費 | 約2万~4万円 |
合計 | 約3万~6万円 |
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住宅の規模や外構の複雑さによって、上記金額から±1万円程度の差が出る場合もあります。
見積もりでチェックすべき項目とは?

養生費は「一式」としてまとめて記載されることも多いため、見積書の内容をしっかり確認することが重要です。
- 養生が明記されているか
→「養生材費」「飛散防止ネット設置費」などの記載をチェックしましょう。 - 面積や単価に根拠があるか
→単価×面積で費用の妥当性を判断し、必要に応じて現地調査の根拠も確認しましょう。 - 養生撤去費が含まれているか
→設置・撤去の両方が含まれているかを確認。別途費用がかかることもあります。
見積内容の確認だけでなく、養生の方法や使用資材についての説明を受け、納得の上で契約を結ぶようにしましょう。

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外壁塗装における養生の手順

養生は、単にビニールを貼ればよいというものではありません。塗装の品質やトラブル防止に直結する工程であるため、計画的かつ丁寧な作業が求められます。
養生作業は、以下の3ステップに沿って行われます。
ステップ1:作業前の確認と準備
ステップ2:養生シートの設置と固定
ステップ3:養生完了後の最終チェック
それぞれの工程で注意すべきポイントを詳しく解説します。
ステップ1.作業前の確認と準備
養生の前には、現場の状況確認と段取りが欠かせません。窓の開閉やエアコンの使用有無など、ご自身やご家族の生活に関わる設備の取り扱いについて、あらかじめ業者とすり合わせを行うことが大切です。
また、近隣への配慮も重要です。塗料の飛散やにおいが発生する可能性があるため、あらかじめ挨拶回りや告知を行うことで、トラブル防止につながります。
この段階では、養生すべき場所のリストアップや、使用する資材の準備も進めておきましょう。
ステップ2.養生シートの設置と固定

実際の作業では、まず塗料が付着してはいけない部分を中心にビニールシートやマスキングテープで覆っていきます。
風でシートがめくれないよう、しっかりと建物に密着させるように養生するのがポイントです。
また、塗装箇所の境界線となる部分での養生は仕上がりの見た目に直結するため、テープの位置や直線性にも注意を払う必要があります。
ステップ3.養生完了後の最終チェック
すべての養生が完了したら、見落としや不備がないかを現場全体で再確認します。とくに、以下の点を重点的に確認することが重要です。
- 窓やドアが問題なく開閉できるか
- 室外機や給湯器の通気が確保されているか
- 養生シートに浮きや破れがないか
最終チェックを怠ったまま養生後の塗装作業に進むと、養生の不備による設備の汚れや近隣トラブルのリスクが高まります。業者に任せるのではなく、自身の目でもしっかりと確認しましょう。
外壁塗装における養生の期間

外壁塗装における養生は、主に下塗り前の段階で実施されます。多くの現場では、足場設置・高圧洗浄を終えてから塗装に入る前に行われ、塗装完了後に撤去されるのが一般的です。
養生が施されている期間は、概ね5〜10日ほどです。その間は「窓が開けられない」「洗濯物が干せない」などの不便もあるため、事前に施工業者と生活動線や設備使用の調整をしておくことが大切です。あらかじめスケジュールを把握しておくと、工事期間のストレスを抑えられるでしょう。
外壁塗装における養生の注意点

外壁塗装における養生の代表的な注意点は以下のとおりです。
- 強風や雨による養生のズレ・破損
- 養生による生活設備の使用制限
- 隙間や浮きからの塗料漏れ
詳しく見ていきましょう。
注意点1.天候による養生のズレや破損に注意する

養生に使われるビニールシートやテープは、強風や雨の影響を受けやすく、固定が甘いとズレたりめくれたりすることがあります。とくに梅雨時期や台風シーズンなどは要注意です。
強度を保つには、マスキングテープとの併用や、建物の凹凸に沿った丁寧な施工が必要です。加えて、天候に応じて現場管理者が適切に補修や張り替えを行う体制も重要です。
注意点2.生活設備の使いづらさに注意する
すべての設備を完全に覆ってしまうと、窓が開けられない・換気扇が使えない・エアコンが動かないといった生活上の支障が出る場合があります。
また、夏場に室外機を覆うと、冷房が使えなくなることもあります。養生範囲や方法は、使用頻度や生活動線と照らし合わせながら柔軟に対応してもらいましょう。
注意点3.養生の隙間や浮きによる塗料漏れに注意する

しっかり養生したつもりでも、テープの端が浮いていたり、凹凸部分に隙間があると、そこから塗料が入り込んでしまうことがあります。これにより、窓ガラスや外構、室内にまで塗料が付着してしまう事例も見られます。
こうしたリスクを防ぐには、施工後の最終チェックで浮きや隙間がないかを入念に確認し、必要があれば補修を加えることが必要です。
養生をしないとどうなる?よくあるトラブル事例

養生は、ただの下準備と軽視されがちです。しかし、怠ると施工後の仕上がりや近隣との関係性に大きく影響します。実際に起こり得る代表的なトラブルとその原因を押さえておきましょう。
近隣からのクレーム・損害賠償への発展
養生を怠ると、塗料が隣家の車や外構に付着し、損害賠償トラブルに発展する可能性があります。特に住宅密集地では、少量の飛散でも周囲への被害につながりやすいです。こうしたリスクを防ぐためにも、事前の適切な養生処置と業者の損害賠償保険への加入が欠かせません。

仕上がりのムラ・色分けラインの乱れ

境界部の養生が不十分だと、色のにじみやラインの歪みが発生し、美観が損なわれます。こうした仕上がり不良は再塗装によるやり直しが必要となり、工期の延長や費用の増加につながるおそれもあります。
剥がし残しや粘着トラブルによる二次被害
粘着力が強すぎるテープや長期間の貼り付けによって、塗装面を傷つけるトラブルも起こり得ます。養生資材の選定や撤去のタイミングに注意し、塗装面への影響を最小限に抑えることが重要です。
自動車や植栽への付着による補償問題
車や庭木などに塗料が付着した場合、自身の所有物であれば高額なクリーニング費用や補修費がかかることがあります。近隣住民のものであれば、前述したように弁償や訴訟に発展するおそれもあります。
このリスクを避けるために、施工前の車両は敷地外へ移動させ、植栽は業者と相談して適切なカバーやシートで保護してもらいましょう。また、万が一に備えて業者が損害賠償保険に加入しているかどうか、契約前に確認しておくと安心です。
信頼できる業者選びのポイント

養生は仕上がりや近隣への影響にも関わる工程のため、丁寧に対応してくれる業者を見極めることが重要です。本章では、その判断ポイントを解説します。
- 養生の説明や施工事例の確認があるか
見積もり時や現地調査で、養生についてどのような説明があるかを確認しましょう。施工事例の写真があると、丁寧な養生が行われているかが判断しやすくなります。 - 見積書の記載や説明の明瞭か
「ビニール養生」や「飛散防止ネット」などの記載があるか、金額だけでなく内容も具体的に説明できる業者を選ぶのが安心です。 - 保険加入の推奨やトラブル対応の姿勢が丁寧か
請負業者賠償責任保険などへの加入有無、トラブル発生時の対応方針が明確かどうかも要チェックです。誠実な業者は、リスクへの備えも丁寧に伝えてくれます。
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まとめ|養生を理解して後悔のない外壁塗装を

外壁塗装における養生は、単なる準備作業ではありません。仕上がりの品質や生活への影響、安全性、さらには近隣トラブルの防止にも直結する、非常に重要な工程です。塗料の飛散を防ぎ、不要な部分をしっかり保護することで、塗装本来の目的である「美観の維持」と「建物の保護」がはじめて達成されます。
特に、初めて外壁塗装を依頼する方にとっては、養生の重要性を理解しておくことで、施工の質を見極める目を持つことができます。
施工後に後悔しないためにも、工事の基礎である養生についてしっかり理解し、納得のいく塗装工事を実現しましょう。
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