塗料に水性・油性の区別があることは、DIYなどでもおなじみですね。外壁に使われる塗料にも、水性・油性の区別があります。
塗装の施工を依頼する場合、見積もりや作業内容の相談、確認をするうえで、塗料選びはどんな関係があるのでしょうか?気になりますね。
今回は外壁塗装の塗料について、水性と油性の性質の違い、価格、選び方、メリット・デメリットなどについて解説します。これから外壁塗装をする方は参考にしてください。
外壁塗装の水性と油性の違いとは?
塗料の油性と水性の違いとは何か、油性のみだった塗料の世界に後発で水性が出てきた経緯を含めて、ご紹介します。
水性と油性塗料の基本的な違い
塗料の成分の組成は、以下のようになっています。
水性塗料 | 顔料・樹脂・添加物+水で薄める |
---|---|
油性塗料 | 顔料・樹脂・添加物+溶剤で薄める |
外壁の塗料のベースは顔料・樹脂・添加物で構成され、顔料は色付け、樹脂は耐候性などの機能、添加物はつや出しや防カビの機能などを担います。
これらの成分を溶かして薄める役をするのが、水や油です。薄めるとは、塗料を柔らかくして塗りやすくするほか、揮発して濃くなった状態を元に戻す働きをさせることです。水や油のことを溶媒とも呼びます。
油性塗料は、使用する溶剤の違いで溶剤(強溶剤)と弱溶剤に分かれています。溶解力が強い強溶剤の種類にはアクリルシンナーやラッカーシンナー、ウレタンシンナー、エポキシシンナーなどがあります。
シンナーとVOC
油性塗料のあの刺激臭の正体が、シンナーです。
以前は水性塗料の耐候性が低かった関係で、強溶剤で塗料を溶かして外壁に塗っていく塗装工事のみでした。その後、技術の進歩で外壁に水性塗料の使用が可能になり、普及してきました。
その理由の一つが、シンナーの人体への影響です。
近年では外壁塗装の環境や人体への被害を減らすため、国で「VOC削減」という理念を掲げています。VOCとは揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)のことです。
人にも環境にも有害となる強溶剤塗料はできる限り使わない方が良いということから、大手塗料メーカーは水性塗料や溶剤塗料の研究を進め、成分の弱いシンナーでも溶かせるような塗料「弱溶剤塗料」も開発しました。
弱溶剤塗料は、シンナーの中でも比較的人体に刺激の少ない「塗料用シンナー」で薄めて使える溶剤系の塗料です。刺激的な臭いだけでなく人体や環境に与える害も、強溶剤塗料に比べて少なくなりました。
自動車用の塗装も現在では、新規生産分はすべて水性塗料で、修理用も徐々に水性の設備に切り替わりつつあります。
シンナーの人体への影響は、後述します。
外壁塗装の水性塗料のメリット・デメリット
強い溶剤の油性塗料が減ってきたものの、無くなっているわけではありません。それには油性塗料のメリットもあるためです。
水性塗料のメリット【安全性】
水性塗料のメリットは、身体に優しいだけではありませんが、まず、施工からそれ以降にわたる塗料の臭いや害が少ないです。
化学物質のため、揮発する成分は全くの無害ということではありませんが、近所の迷惑や、施主自身の身体の害になりにくいといえます。
同時に引火や健康の害が少ないので、置いておいても安心で、塗装している現場での保管が楽です。油性塗料の場合、希釈するシンナーから蒸発される溶剤蒸気には引火の恐れがあるとされています。危険物に当てはまるので取り扱いにも注意が必要です。
また、水性塗料は扱いの手間の少ない1液型が多く、塗料調合の手作業の効率がいいです。
塗料に溶剤や水だけを混ぜて使用するのが「1液型」、これに対して塗装する直前に、さらに硬化剤を加えてから使用するのが「2液型」です。
水性1液型 | 大手メーカーが扱っている塗料で扱いやすい 安価だが油性に比べて耐久性・密着度は劣る |
---|---|
油性1液型 | 水性1液型のようにホームセンターなどで手に入りやすい塗料 水性塗料に比べて耐久性が高い |
油性2液型 | 1液型よりも耐久性が高く、キレイな塗膜が長持ちする 硬化剤を混ぜ合わせる作業やその後の使用可能時間が限られるため、プロに依頼するのがベスト |
水性塗料のデメリット
改善はされてきているものの、水性塗料は油性塗料より少し耐用年数が短い、もしくは少しもろくなりやすい、艶が落ちやすい性質があります。耐候性が水性塗料の最大の課題です。
また、塗装できない下地の種類が多いです。とくに、鉄性の部材などには使えない水性塗料が多いのが現状です。
そして塗装の環境を選ぶ面があり、外壁のように屋外では、低温の気候下で塗る事ができません。また、雨が多く湿度が高いと、油性に比べて乾燥などが難しくなります。
乾燥速度の問題
近年の天気予報は相当正確ですが、それでも外れてしまうことがあります。理想である湿度63~65%よりも高い湿度で塗装を行うと、塗料にもよりますが、実際の色よりも白く濁った仕上がりになることがあります。
白い濁りが強く出て、綺麗な仕上がりにならなかった場合は、塗り直しをする必要があります。
また、夏季は想定外のゲリラ豪雨に見舞われることもあり得ます。塗装中・乾燥前に大雨に遭遇したら、水性塗料は雨で流れてしまいます。もちろんしっかりと乾燥し水分が蒸発・塗膜が硬化すれば、雨で塗料が落ちることはありません。
これらの水性塗料のデメリットはVOC削減の観点から、今後も対策が進んでいくでしょう。
以前は、耐久性以外にも乾燥スピードの面で油性塗料の方がメリットが多く、外壁や屋根の塗装工事では、油性塗料が選ばれるケースがほとんどだったと言えます。
これまでのイメージで水性塗料は、色落ちしやすいのでは?また、耐久性や耐候性などで油性塗料よりも劣るのでは?といったイメージが先行していましたが、塗料開発競争によって水性塗料は進化を遂げ、近年の外壁塗装工事では水性塗料を選ぶ人が多くなってきました。
外壁塗装の油性塗料のメリット・デメリット
デメリットとして一番に挙げられるのは、やはり人体への影響でしょう。シックハウス症候群に敏感で、悩まされる人も多いです。しかし、
油性塗料のメリット【耐久性】
油性塗料は、平均的に長持ちする傾向があり、風雨にさらされても劣化しにくいです。また、水性塗料よりも艶を長く維持しやすいでしょう。
水性と油性の塗料の耐久性の違いは、以下のデータがあります。
塗料には耐用年数が決められていて、外壁塗装のおおよその寿命が決まっています。外壁塗装の際には、この耐久性が次回の塗り替えの目安になるので、ぜひ確認しておきましょう。
耐久性はメーカーやグレードによって差があります。
【水性と油性の塗料の耐久性の違い】
樹脂塗料 | 水性塗料 | 油性塗料 |
---|---|---|
アクリル | 1年〜3年 | 3年〜5年 |
ウレタン | 3年〜10年 | 8年〜10年 |
シリコン | 5年〜13年 | 10年〜15年 |
フッ素 | 8年〜15年 | 15年〜20年 |
アクリル・ウレタン・シリコン・ラジカル・フッ素は、塗料の成分によるグレードの違いです。グレードの違いによって費用も大きく変わります。
外壁での耐久性は紫外線や天候、住んでいる地域、日頃のメンテナンスなどによって差が出ますが、おおむね油性塗料の方が優勢であることが分かります。
また、油性塗料は表面が侵されにくいため、外壁に汚れがつかない時期が長いのもメリットです。また、低温でも乾燥させやすいため、天候を選ばないと言われています。このほかに、油性塗料は密着性の高い塗膜を作る力に優れ、剥がれにくいのが特徴なので、表面の平滑な金属面への塗装が得意で、仕上がりがきれいです。
油性塗料のデメリット
油性塗料のデメリットは、溶剤のシンナーのにおいが強く、揮発する臭気が外壁塗装後、半日程度は強く出ることです。それ以降もにおいは周囲にしばらく残るでしょう。
また、乾燥期間の寒さや湿気には強いかわりに、平均的な乾燥時間は水性塗料よりも長くかかります。水性塗料に必要な乾燥時間は気温23℃の環境で3~4時間程度に対し、油性は6時間程度を必要とします。ただし、油性でも強化剤を混合させる塗料を使う場合は、3時間程度で乾燥させることもできます。
油性の仕上がりは、完全なつや消しにするのが難しいため、外壁を和風のマットな外観にしたいときは、油性の塗料は向いていない場合があります。
また、油性塗料は作業時の扱いの難しさにも注意が必要です。水性塗料に使用したハケやローラーは、素早く水洗いをすれば何度も使用できますが、油性塗料では、道具洗いも専用の溶剤が必要です。
さらに、一度開封・使用した油性塗料はほぼ保存はできず、数時間から当日以内に使い切らないといけない決まりがあります。
シンナーの人体への影響とは
冒頭でも言いましたが、油性塗料に使用するシンナーなどの有機溶剤は、人体にとっては危険な有害物質です。シンナーの刺激臭を長く吸い過ぎると吐き気、めまい、睡眠障害、頭痛、月経不順、目、喉、鼻などの粘膜に刺激を感じたり、不快感が出たりします。
長期的にシンナーを吸い続けると不妊(男女)、ノイローゼ、シックハウス症候群、呼吸困難などにかかる可能性があります。
厚生労働省は、有機溶剤の作業者に労働災害が起きないよう、「有機溶剤作業主任者」の資格を持つ人を現場に必ず配置し、作業員の健康診断を行うよう定めています。
水性・油性塗料の特徴
水性塗料 | 油性塗料 | |
---|---|---|
<メリット> | ・乾燥の際の臭いが少ない ・近隣や住む人の害になりにくい (無害ではない) ・身体の害や扱いの危険が少ない ・価格が少し安めにできる | ・塗膜が長持ちする ・艶が長続きする ・汚れが付きやすくなるまで時間がかかる ・低温でも乾燥させやすい |
<デメリット> | ・油性よりやや寿命が短い ・鉄など塗装できない下地の種類が多い ・艶が落ちやすい ・低温で塗る事が難しい ・雨が多いと作業が難しい | ・臭いが強め ・価格が少し高め ・乾燥に時間がかかる ・マットな仕上げにしにくい |
外壁塗装の水性塗料と油性塗料・価格の違いは?
一般的には、油性塗料の方が価格が高めです。シビアな耐候性能が支持されていながらも、水性塗料が主流となりつつあることから、生産数が少ないためです。
油性塗料と水性塗料の価格差
(平方メートル/円) | 水性塗料 | 油性塗料 |
---|---|---|
ウレタン | 1,300円〜1,700円 | 2,000円〜2,500円 |
シリコン | 1,700円〜2,500円 | 2,300円〜3,000円 |
フッ素 | 3,000円〜3,800円 | 3,500円〜4,800円 |
水性塗料の乾燥時間が短くなったことで、外壁の下塗りから上塗りの間の期間が短縮できるようになりました。職人の作業時間が工賃に反映されたことでも、水性塗料の施工コストが下がっています。
外壁塗装はどちらが良い?水性塗料と油性塗料の選び方
施主の基本的な予備知識として、状況に応じて水性・油性どちらが良いと希望すればいいかをご説明します。
水性塗料がおすすめの場合とは?
周囲へのにおいなどの影響が少ない方がいい場合や、ご家族にデリケートな人がいて、健康被害が心配な場合は、なるべく水性塗料を希望するといいでしょう。
また、外壁塗装の価格を安く抑えたい場合も水性が向きますが、外壁でも対候性が強く求められるなどの環境では、長持ちしたほうが長い目ではコストは下がるため、一概に水性が安いとは言い切れません。
油性塗料がおすすめの場合とは?
外壁のほか、屋根などシビアな耐候性が求められる場合は、油性塗料の方が向いている場合もあります。
また、塗装する材質によっても塗料の適性は変わります。ガルバリウム鋼板製のサイディング壁や、外構などの鉄部へのつやのある塗装は、油性塗料の方が仕上がりが美しい上、適した塗料の数も多いでしょう。
外壁塗装をする施主が知っておくべきこと
現状、外壁塗装用の普及度では7割以上が水性塗料です。業者からも水性塗料のほうを勧められる場合が多く、それでほぼ問題はありません。水性か油性かの選択は、塗装する壁材や塗る場所の状況でも選ぶことになりますが、その点は塗装業者と相談しましょう。
外壁乾燥時のにおいやシンナーの刺激の問題は、時間とともに徐々に収まってきますが、注意は必要です。ただし水性の塗料も、シンナーを利用した油性塗料に比べれば臭いが少ないだけで無害ではありません。
塗料には、大なり小なりの身体への悪影響は存在します。化学物質過敏の人は、身体への影響の少ない水性塗料やオーガニックペイントの使用を相談したり、施工中はマスクの使用や家を留守にしたりするなどのケアを検討しましょう。
塗装でもっともにおいや揮発の強いピークは、下塗りから上塗りの3日間、とくに中塗り・上塗りの2日間です。
また、水性塗料でもとくにおすすめなのは、F☆☆☆☆(フォースター)の塗料です。
JIS(日本工業規格)、JAS(日本農林規格)では、ホルムアルデヒト(臭いの元)の発散量によって等級が決められています。F☆☆☆☆はホルムアルデヒドの放散基準が最も少なく、臭いも少ない塗料です。
まとめ
外壁塗装の塗料について、水性と油性の性質などの違い、価格、選び方、メリット・デメリットなどについて解説しました。
塗料に対する基礎知識も、塗装業者との相談の際に役立ちます。長持ちさせたい、きれいに仕上げたい、身体に悪くないなど、こちらの希望を分かりやすく伝えるのが大切です。
施主と丁寧にコミュニケーションしてくれる優良な業者探しは、ペイプロをご活用ください!